Slide 1: エピゲノム研究のデザインと応用例 〜ATAC-seq解析を中心に〜
1 エピゲノム研究のデザインと応用例 〜ATAC-seq解析を中心に〜 株式会社レリクサ 研究開発部 シニアマネージャー 小田真由美
Slide 2: 本日のテーマ
2 本日のテーマ 1. エピゲノム研究のデザイン 2. ATAC-seq:オープンクロマチン解析の原理と歴史 3. エピゲノム研究の応用
Slide 3: 知りたいことはなんですか?
3 知りたいことはなんですか? たとえば… 病気の原因を探りたい 治療の方法を開発したい 病気の早期発見をしたい 薬の効くメカニズムを知りたい
Slide 4: 遺伝子発現の仕組み
4 遺伝子発現の仕組み mRNA タンパク質 ゲノムDNA
Slide 5: エピジェネティック制御と転写因子
5 エピジェネティック 細胞分裂を超えて維持される 分子制御機構 遺伝子発現制御機構の総称 転写因子 mRNA タンパク質 DNA結合ドメイン ? 結合配列 遺伝子制御領域
Slide 6: エピゲノムとは?
6 高次構造 オープンクロマチン 領域 エピゲノムとは? リモデリング因子 ヒストン修飾 DNAメチル化 複数の分子機構 による核・ゲノムの miRNA 体系的な制御
Slide 7: クロマチン・アクセシビリティとオープン・クロマチン領域
7 クロマチン・アクセシビリティ: DNA-ヒストン複合体=ヌクレオソームの位置や高次構造により、DNA 配列への分子アクセス性が変化すること。 オープン・クロマチン領域: 様々なエピジェネティック制御の結果、ヌクレオソーム密度などが低下 し、DNAへのアクセス性が高い領域。
Slide 8: 本日のテーマ
8 本日のテーマ 1. エピゲノム研究のデザイン 2. ATAC-seq: オープンクロマチン解析の原理と歴史 3. エピゲノム研究の応用
Slide 9: オープンクロマチン領域
9 オープンクロマチン領域: ノンコーディングRNA、DNAメチル化、ヒストン修飾、ヘテロクロマチン形成が関与 • 転写開始領域のヌクレオソームfree領域 • 転写因子の結合 遺伝子の活性化状態を反映 • ヌクレオソームの安定性
Slide 10: Mnase assayによるヌクレオソーム関連DNAの観察
10 Mnase assayによるヌクレオソーム関連DNAの観察 MN MN MN MN MN MN MN 146bp • 配列特性の低い消化に よる”periodicity” • アクセス頻度とDNAフ ラグメント長の関係 Hewish et al Biochem Biophys Res Commun 52(2): 504-510 (1973)
Slide 11: DNase I assay: ショートリードによるDHSの網羅的な解析
11 DNase I assay: ショートリードによるDHSの網羅的な解析 DI DI DI DI DI DI DI 146bp DNase hypersensitive site (DHS)=保存性の高い制御領域の発見。 PCR(1985年〜)、マイクロアレイ(2006年〜)の導入によりこれ らの遠位制御領域の定量的解析が可能に。 Dnase I-seq: Solexaによる網羅的なクロマチン・アクセシビリティ解析へ。 Boyle et al Cell 132, 311–322 (2008) • シングルカット(タイプII制限酵素を使う) • ダブルカット(フラグメントのサイズ選択)
Slide 12: Mnase-seq: ショートリードシークエンスによる網羅的解析
12 ショートリードシークエンスによる網羅的解析 DI DI DI DI DI DI DI 大量の細胞サンプル MN MN MN MN 煩雑なライブラリ作成手順 MN MN MN 高いシークエンスコスト Mnase-seq: ショートリードシークエンスによる網羅 … 的ヌクレオソーム配置解析(25bpショートリード) ・遺伝子発現活性化によるヌクレオソーム再編成(位 置の変化) ・ヒストンバリアント(H2A.Z)や活性ヒストン修飾 マーク(H3K4me3)によるヌクレオソーム除去。 Schones et al. Cell 132(5):887-898 (2008).
Slide 13: ATAC-seq: assay for transposase-accessible chromatin using sequencing
13 ATAC-seq: assay for transposase-accessible chromatin using sequencing Tn5 Tn5 Tn5 Tn5 Tn5 Tn5 Tn5 迅速かつ高感度・少ない未固定生細胞(500細胞〜)に適応可能な オープンクロマチン解析法。 トランスポゼース(Tn5)がDNA タグの付加によりDNAを分断。 Buenrostro et al. Nat Methods 10(12):1213-1218 (2013) Li et al. Genome Biology 20:45 (2019)
Slide 14: ATAC-seq: assay for transposase-accessible chromatin using sequencing
14 ATAC-seq: assay for transposase-accessible chromatin using sequencing 効率的なタグメンテーションに よってクロマチン・アクセシビリ ティ解析の応用範囲が拡大。 Buenrostro et al. Nat Methods 10(12):1213-1218 (2013)
Slide 15: Tn5 Tn5 Tn5
15 Tn5 Tn5 Tn5 Tn5 Tn5 Tn5 Tn5 Buenrostro et al. Nat Methods 10(12):1213-1218 (2013)
Slide 16: フラグメント長さによる区分
16 フラグメント長さによる区分 Buenrostro et al. Nat Methods 10(12):1213-1218 (2013)
Slide 17: フラグメント長さとperiodicityの違い
17 フラグメント長さと periodicityの違い Buenrostro et al. Nat Methods 10(12):1213-1218 (2013)
Slide 18: ChIP-seqとATAC-seqの解析方法の違い
18 ChIP-seqとATAC-seqの解析方法の違い Tn5 Tn5 ATAC-seq Tn5 Tn5 Tn5 Tn5 Tn5 Ab Ab Ab ChIP-seq
Slide 19: NoME-seq:
19 NoME-seq: GpCメチルトランスフェラーゼ(M.CviPI)を使ってアクセシブル領域をマーク GpC MCviPI GpC GpC GpC GpC MCviPI GpC MCviPI GpC MCviPI GpC GpC GpC MCviPI 利点:正確なオープンゲノム(細胞・アレルご と)の割合がわかる。DNAメチル化も同時に見る ことができる。 欠点:全ゲノム解析が必要。コスト高。 Kelly et al. Genome Res 22:2497–2506 (2012).
Slide 20: 発現量とオープンクロマチン領域の頻度
20 発現量とオープンクロマチン領域の頻度 20% 35%
Slide 21: 1.0 0.9 s 0.8 0.7 0.6 = Promoters & 0.12; : : + 0.74
21 1.0 0.9 s 0.8 3 0.7 3 0.6 = Promoters 05 & 0.12; : : 1 + 0.74 0.4 — 0.3 2 0.11 ; avo = | as re Cs a Ss 0.2 3 z= -1000_ -500 0 +500 1000 @ = Distance from CTCF motif (bp) 2 0.10 20% o66 g H z Q = 5 0.09 0.62 1 0.08 ' : . : 10.58 -1000 -500 0 +500 1000 Distance from TSS (bp) Decoding Life, Creating
Slide 22: ショウジョウバエを用いた高密度NoME-seq:
22 ショウジョウバエを用いた高密度NoME-seq: M.CviPIとSssIを使ってアクセシブル領域を高密度にマーク。 DNA分子ごとの CpGメチル化を フットプリント 持たない ショウジョウバエ Krebs et al. Mol Cell 67, 411–422 CpGメチル化と (2017). GpCメチル化の 両方を行う 解像度が上がる DNA分子ごとのパターンが得られる
Slide 23: ヌクレオソームの有無と独立にPol IIの結合が発現と相関する
23 ヌクレオソームの有無と 分子ごとにイベントが 独立にPol IIの結合が発現と相関する 観測できる Krebs et al. Mol Cell 67, 411–422 (2017). 19% 62%
Slide 24: シングルセルATAC-seq:
24 シングルセルATAC-seq: 1細胞ごとのオープンクロマチン領域の解析。 Buenrostro et al. Nature 523:486-496 (2015)
Slide 25: 本日のテーマ
25 本日のテーマ 1. エピゲノム研究のデザイン 2. ATAC-seq:オープンクロマチン解析の原理と歴史 3. エピゲノム研究の応用
Slide 26: ATAC-seq解析の応用
26 ATAC-seq解析の応用 1. エンハンサーのアクセシビリティ解析 2. 転写因子フットプリント解析 3. アレル特異的アクセシビリティ解析の応用
Slide 27: エンハンサーのアクセシビリティ解析
27 エンハンサーのアクセシビリティ解析: ATAC-seqを用いて結合している転写因子を予想する。 標的となる遺伝子がどの転写因子で制御されているか調べる。 制御している転写因子に対する分子標的薬の選択ができる。 Buenrostro et al. Nat Methods 10(12):1213-1218 (2013)
Slide 28: エンハンサーのアクセシビリティ解析
28 エンハンサーのアクセシビリティ解析: ATAC-seqを用いて結合している転写因子を予想する。 ENCODE projectで解析された転写因子 1,108,081 ChIP-seqピークの94.4%がア クセシブル領域にあった。 遠位アクセシブル領域の多くは転写因子 の結合を伴う。 細胞の差異・変化によって生じるアクセ シブル領域のモチーフ解析・ChIP-seq 解析により制御転写因子が予想できる。 Thurman et al. Nature 489:75-82(2012)
Slide 29: 転写因子フットプリンティング解析
29 転写因子フットプリンティング解析: ATAC-seqを用いて転写因子の結合の有無を解析する。 転写因子の結合は微細 なアクセス性の違いを もたらす。 アクセシブル領域の うち、特定の結合配列 モチーフを持つ領域で 共通のフットプリント が生成されるかどうか で実際の結合を 予測できる。 Buenrostro et al. Nat Methods 10(12):1213-1218 (2013)
Slide 30: Li et al. Genome Biology
30 Li et al. Genome Biology 20:45 (2019)
Slide 31: アレル特異的なアクセシビリティ解析
31 アレル特異的なアクセシビリティ解析: 活性のあるゲノム・制御領域を見分ける。 A アクセシブルな領域から配列情報 が得られる。 T 活性のあるアレルを特定できる。 T T T T Xu et al. Nat Genet 49(3):377-386 (2017) Jégu et al. Nat Struct Cell Biol 26:96-109 (2019)
Slide 32: アレル特異的なアクセシビリティ解析
32 アレル特異的なアクセシビリティ解析: 活性のあるゲノム・制御領域を見分ける。 全ゲノム解析か A ら得られた統合 失調症SNPは ATACピークに T 濃縮されていた。 T T T Bryois e tal. T Nat Commun 9:3121(2018) 制御領域の配列の違いは、アレルによ る遺伝子機能の差を生み出す。 アクセシブル領域には、疾患に関与 するコード領域外の機能的SNPが多く 含まれる。
Slide 33: アレル特異的なアクセシビリティ解析
33 アレル特異的なアクセシビリティ解析: 活性のあるゲノム・制御領域を見分ける。 ゲノム変異情報とクロマチン 状態から因果関係を推測。 Kumasaka et al. Nat Genet 51:128-137 (2019)
Slide 34: アレル特異的なアクセシビリティ解析
34 アレル特異的なアクセシビリティ解析: 活性のあるゲノム・制御領域を見分ける。 ATAC-seqにより、少量・特異的な組織領域にお けるゲノムの機能領域を濃縮できる。 ゲノム情報の少ない生物種でも機能アノテー ションが容易に。 ヤツメウナギ亜種の比較による 制御領域の進化的変化の検証。 Hockman et al. Nat Commun 10:4689 (2019)
Slide 35: 本日のテーマ
35 本日のテーマ 1. エピゲノム研究のデザイン 2. ATAC-seq:オープンクロマチン解析の原理と歴史 3. エピゲノム研究の応用
Slide 36: 小田 真由美 博士(獣医学)
36 小田 真由美 博士(獣医学) 研究開発部 シニアマネージャー 慶應義塾大学医学部 非常勤講師
Slide 37: Rhelixaの次世代シーケンス・データ解析受託サービス
37 多様なバイオインフォマティクスニーズに応える Rhelixaの次世代シーケンス・データ解析受託サービス 目的に応じた適切な解析プランを提案 豊富なカスタム解析オプション・選べるプラン サービスの詳細はウェブサイトで
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Slide 39: ENCODE project
Buenrostro et al. Nat Methods ENCODE project 39 10(12):1213-1218 データから計算された (2013) 転写因子結合部位との 距離 他の修飾・モチーフとの相関